運送業の労働環境

運送業の働き方改革 内容と現在の状況について

更新日:

働き方改革

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今回は運送業の働き方改革について、その内容と現在の状況についてお話をしていきます。

 

働き方改革とは、これまでの日本企業における労働環境を見直し、長時間残業や過労死を減らしつつ生産性を上げるために国が行っている改革のことです。

そしてもちろん、ブラックな労働時間と薄給が問題になっている運送業界でも取り組まれています。

 

もしあなたが運送業界で働いているか、もしくは働きたいと思っているのなら、労働環境の改善はなんとしても実現して欲しいことではないでしょうか?

「あまりにも長い労働時間をなんとか抑えて欲しい」、「たくさん働いている分、もっと給料を上げて欲しい」といったことについては多くのドライバーが感じているはずです。

そのため運送業界では今、働き方改革への関心がとても強まっています。

 

しかし現状、どういった問題に対してどういった取り組みがされているのかについては、まだまだ知らない人が多いです。

そこで今回は、運送業界における働き方改革についてわかりやすく説明をしていきます。

 

  • 長すぎる拘束時間を改善して欲しい
  • 給料をもっと上げて欲しい
  • 仕事中にしっかりと休憩をとりたい
  • サービス残業をなくして欲しい
  • パワハラをなくして欲しい

 

運送業についてこのようなことを考えている場合は、ぜひ参考にしてください。

 


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運送業界における働き方改革の行動計画

ワークライフバランス

 

まずは、運送業界における働き方改革がどのようなものなのかについて説明をしていきます。

 

働き方改革とは、2018年6月29日に参議院で成立した「働き方改革関連法案」によるものです。

2019年4月1日から順次施行されることが決まっています。

働き方改善関連法案のポイントは以下の3つです。

 

  1. 時間外労働の上限は月45時間、年360時間を原則とする。
    臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、 複数月平均80時間(休日労働含む)が限度となる。
  2. 雇い主は10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者に対して、 毎年5日、時季を指定して有給休暇を与える必要がある。
  3. 同一企業内において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、 派遣労働者)の間で個々の待遇における不合理な待遇差が禁止される。

(参考:愛知労働局HP)

 

この3つのポイントを遵守するために、各業界が施策を講じなければいけないわけですね。

トラック運送業界では法施行後5年間の猶予が与えられている状態ですが、その5年間で改善しなければいけないことはたくさんあります。

 

そこでここからは、

 

  • 運送業界の働き方における問題点とは?
  • 問題点に関してどのような取り組みが実行、計画されているのか?

 

ということについて説明していきます。

 

今後、運送業界がどのように改善されていくのか、この機会にぜひ確認しておいてください。

 

運送業界にはどのような問題があるのか?

運送業界ではときおり、その労働環境が問題視され、運送業界大手の会社がブラック企業だとニュースで取り上げられることもあります。

 

(参考)
⇒運送業は激務?辞めたいブラック企業と噂が出た業者一覧

 

国土交通省の資料によると、運送業界(とくにドライバー職)には以下のような問題があるとされています。

 

  • 労働時間が長い(全職業の平均値より1割~2割長い)
  • 所定外労働時間が長い(全職業の平均値より2割~3割長い)
  • 年間賃金が低い(全職業の平均値より1割~3割長い)
  • 人手不足が深刻化している(有効求人倍率が全職業平均の約2倍)
  • 就労者の高齢化が進んでいる(全職業の平均値より3歳~17歳高い)
  • 女性比率がかなり低い(全職業平均の1割未満)

(参考:自動車運送事業の働き方改革について.PDF)

 

この中でもとくに根本的で大きな問題とされているのが「人手不足」の問題です。

人手不足という問題があるからこそ、ドライバーの労働時間は伸びてしまい、サービス残業も発生してしまいます。

それどころか、食事休憩すらろくに取れないほどの激務が横行しているのが現状なのです。

 

そしてもう1つ大きな問題とされるのが「低賃金」の問題です。

運送業、とくにドライバー職の賃金は、労働時間に対してかなり安いという現状があります。

そのため運送業界はほかの業界に比べ、2割長くて2割安いとさえ言われているほどなのです。

これは、「労働時間は他業種より2割長いのに賃金は他業種より2割安い」ということを意味しています。

その影響もあって、若者や女性がなかなかドライバー職として定着せず、人手不足を招いてしまっているわけです。

 

そのため運送業界における働き方改革では、主に「人手不足」「低賃金」の問題解決を目的としています。

実際に運送業者で働いているドライバーに話を聞いてみると、やはり現場でもこの2つがもっとも大きな問題なのだと認識されているようです。

 

運送業界ではどのような働き方改革を行っているのか?

運送業界では、人手不足や低賃金という大きな問題に対して、以下のような対策を行っています。

 

  • 生産性の向上
  • 多用な人材の確保・育成
  • 取引環境の適正化

(参考:自動車運送事業の働き方改革について.PDF)

 

それぞれがどのような対策なのか、1つずつ見ていきましょう。

 

運送業界の働き方改革1.
生産性の向上

まず、運送業の働き方改革として、生産性の向上のための施策が計画、実行されています。

たとえば1回の運送で多くの荷物を運べるようになれば、それだけ人材を抑えることができますし、1回の運送で多くの利益を出すことも可能です。

そうなれば人材不足、低賃金という2つの問題を大きく改善することができます。

 

そのためにまず行われているのは、荷待ち時間の短縮です。

トラックドライバーにとって、荷待ち時間が長時間労働の要因になっているということが分かっています。

そのため、対策として荷待ち時間の記録が義務付けられました。

また2017年7月から荷主勧告制度が新しくなっており、これは過労運転の原因が荷主にあると判断された場合、国土交通大臣がその荷主に対して違反行為の再発防止のための適当な措置をとるといったものです。

荷主勧告制度は、主に以下のような要因に対して適応されます。

 

  • 荷待ち時間の恒常的な発生
  • 非合理な到着時間の指定
  • やむを得ない遅延に対するペナルティ
  • 重量違反などになるような依頼

 

このように、荷主の無理な依頼に対して対策がされているわけですね。

 

そして次に検討されているのが、ダブル連結トラックの導入促進です。

ダブル連結トラックとは、1台のトラックに対して2台分の荷台を連結させたトラックのことです。

トラックの荷台部分を2台分連結することによって、運べる荷物の量が単純計算で倍になります。

その分少ない人員で大きな成果を出すことができるため、長距離ドライバーの人手不足と低賃金の両方にアプローチすることができるというわけです。

 

そしてもう1つ行われているのが、運行管理業務の効率化です。

運転以外の業務についてもシステム導入や見える化による効率化を図ることによって、労働時間を削減する対策が取られています。

ドライバーの中には配達後の書類整理が残業の大きな原因になっている人も多いので、労働時間の改善に向けて効果的な一手です。

 

運送業界の働き方改革2.
多用な人材の確保、育成

運送業界では慢性的、かつ深刻な人手不足が問題となっているため、働き方改革では人材の確保にも力を入れています。

そのため人材確保のアクションプランとして、以下のような施策でドライバーの処遇、労働環境、労働条件の改善が検討されています。

 

  • 荷積みの機械化による支援
  • サービスエリア、パーキングエリアにおけるマス不足の改善
  • 女性でも働きやすい環境づくり
  • 第二種免許の受験資格の見直し検討

 

まず、荷積みの機械化が進めば、ドライバーの力仕事を格段に減らすことができます。

そうなればドライバー職のハードルは大幅に下がり、高年齢者や女性でもドライバーとして活躍することが可能となるのです。

 

また、サービスエリア、パーキングエリアが充実すれば、長距離ドライバーが適度の休息をとれるようになります。

そうなれば過労運転のリスクが下がるほか、健康的に働くことができるようになり、人材募集がしやすくなったり、より長く働き続けることができるようになったりするはずです。

 

あとは新しい人材確保のために、女性でも働きやすい環境づくり第二種免許をより取りやすくなるような施策も検討されています。

要はドライバーとして働くための窓口を広げることにより、人手不足を解消しようとしているわけですね。

ドライバーの参入障壁が低くなれば、その分新しい人材が確保しやすくなります。

 

このように運送業界の人材確保は、国も協力しての大掛かりな改善が計画されているのです。

 

運送業界の働き方改革3.
取引環境の適正化

運送業界の取引環境を改善することにより、ドライバーの労働環境も改善されます。

働き方改革として検討されているのは、以下のようなことです。

 

  • 荷主、元請けの協力体制の確保
  • 適正な料金の確保

 

荷主と元請けの取引が適正化されれば、生産性の向上にも良い影響を与え、ドライバーの労働環境も改善されます。

とくに荷主の受取体制が整備されていればドライバーの負担は大きく下がり、労働時間の改善に繋がるはずです。

逆に現状の受取体制が整備されていない状態だと、長い待ち時間や余分な作業の発生によって、ドライバーの労働時間は長くなってしまっています。

 

また、取引において適正な料金が確保されていることも重要です。

買い叩きなどが起こってしまえば、その影響はダイレクトにドライバーの低賃金へと繋がります。

そういったことが起こらないよう、クリーンな取引を徹底することも運送業界の大きな課題なのです。

 

これらの理由により、運送業界の働き方改革の中において取引環境の適正化が重要視されています。

とくに最近だと大手通販サイトと大手運送業者の取引が問題視された事例などもありますので、働き方改革のためには必要な対策と言えますね。

 

運送業界における働き方改革の現状

ランチタイム

 

運送業界における働き方改革は、今まさにこれから動き出そうとしている状況です。

 

前述したとおり、2018年6月29日に参議院で「働き方改革関連法案」が成立し、2019年4月1日から順次施行されることが決まっています。

働き方改革関連法案では時間外労働時間の罰則付き上限規制が課せられることになっており、トラック運送業界では法施行後5年間の猶予が与えられている状態です。

つまり現状は、これからの5年間で働き方改革が本格的に動き出し、法案遵守に向けて労働環境が大きく変わっていく、という段階だということですね。

 

とはいえ、大手運送業者はすでに働き方改革に向けて行動を起こしています。

たとえば運送業最大手の1つであるヤマト運輸(クロネコヤマト)は、2017年に労働環境改善のために基本運賃を値上げしました。

さらに残業時間に規制をかけるなどして、長時間労働改善のための取り組みも行っています。

現状、労働時間が減ったことによってドライバーの収入が減っているという問題も発生していますが、少しずつ労働環境改善が進んでいるのも確かなのです。

 

このように大手を中心に、少しずつ働き方改革は進行しています。

ここに国による施策も加わってくるはずなので、これからの5年間でドライバーの労働環境が大きく変わる可能性は非常に高いです。

 

運送業界の働き方改革は中小企業に痛手を与える?

レッドカード

 

運送業界の働き方改革には、中小企業に痛手を与えてしまう可能性があるという問題もあります。

どういうことかというと、大手企業の人材確保を強化することによって、派遣業などをメインに行ってきた中小運送業者はさらなる人材不足に陥ってしまう可能性が指摘されているのです。

 

ただ、我々ドライバーの立場としては、労働環境が比較的に良い大手での求人が増えることになりますので、むしろプラスだと考えることができます。

そういった意味で言うと、労働環境の悪い中小企業が人手不足による倒産の危機にさらされてしまうのは、運送業界の改善を進めて行くうえでは仕方のないことなのかもしれませんね。

 

ただ注意が必要なのは、今現在中小企業に勤めているドライバーです。

もし今中小運送企業で仕事をしているなら、これからの5年間は激動の年になる可能性があります。

それこそ、勤めている会社が倒産してしまう可能性だって大いにあるわけです。

 

その流れに取り残されないよう、運送業者で働くのならスキルアップやキャリアアップには一段と力を入れるべきだというのが、私の個人的な意見ですね。

 

【まとめ】運送業界の働き方改革はこれから大きく動き出す

軽トラと女性

 

今回は運送業界の働き方改革についてお話をしてきました。

 

働き方改革関連法案」は2019年4月1日から順次施行され、運送業界では5年間の猶予があるということでしたね。

そのため、働き方改革はこれから大きく動き出していくことが期待されています。

 

運送業界の働き方改革でもっとも改善されなければいけないのは、「人手不足」「低賃金」の問題です。

人手不足が解消すれば今問題になっている長時間労働も解決するはずですし、低賃金の問題が解消すれば、人手不足の問題を解消できるようになるはずです。

 

そのため運送業界では、働き方改革として以下のような問題の改善に取り組んでいます。

 

  • 生産性の向上
  • 多用な人材の確保・育成
  • 取引環境の適正化

 

ただ、働き方改革関連法案の施策猶予が5年間あることからもわかるとおり、改善は一筋縄ではいきません。

そういう意味でいうと、今はまだ改善の進み方の様子を見るというのも1つの手かもしれませんね。

 

また、今回の記事を読んでいただければわかるとおり、現状、働き方改革で改善されそうなのは、主に長距離ドライバーの労働環境についてです。

そのため個人宅への宅配便などについては、引き続き人手不足が続く可能性があります。

逆の言い方をすれば、今後もドライバーの仕事がなくなる可能性は少ないということです。

 

そういう考え方をすれば、私のように個人事業主としてドライバーをやりつつ業界の動向を見守る、というのも良い一手だと思います。

今の慢性的な人手不足はそうそう解消しないでしょうから、運送業者の労働環境が改善されてから就職を検討しても十分に間に合うのではないでしょうか。

少なくとも個人でドライバーをしていれば、スキルについては問題ないはずですからね。

 

現状、運送業界は深刻な人手不足に悩まされています。

労働環境についても、明日いきなり良くなるということはなく、少しずつ改善が進んでいくはずです。

だからこそ今は経験を積みながら各業者の動向をチェックして、いつでも動けるようにフットワークを軽くしておくことが、1人のドライバーとしてとるべき行動なのではないかと思っています。

 

(追記)

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